2025年には多死社会が到来すると言われているわが国において、超高齢多死社会に対応できる地域共生社会を構築する事は喫緊の課題である。少子化による経済活動の減弱化を想定した上でよりゆたかな社会を目指すためには、宇沢が唱えた「社会的共通資本」の観点から地域共生力の強い社会を創出することが重要であると考える。社会的共通資本(Social Common Capital)とは、経済学者・宇沢弘文が提唱した概念で、「ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置」のことである。社会的共通資本の向上は、地域内の人々の信頼関係や協力関係を築きながら、共有の価値観やネットワークを強化するという事にほかならない。ここでの地域共生に強い社会とは、支え手と受け手側に分かれるのではなく地域に在住する一人一人が生きがいや役割をもち、助け合いながら暮らしていける包摂的なコミュニティ、地域社会を創るという考え方といえる。
世界に先駆けて超高齢多死社会を迎える日本において、今後どのような社会を築いていけばいいのかについて、「社会的共通資本」×「死」をキーワードに考える事は必要不可欠であると考える。そこで本学の強みともいえる「宗教・歴史・民俗・福祉・医療」といった教育的資源を総合的に活用し、終末期ケアを必要とする人や社会的に孤立した人などにも多様なつながりが生まれやすくするための環境整備や専門職がパートナーとなりコミュニティにつなぐ社会的包摂の観点から、社会共通資本力の高い多死社会に適応しうる地域共生社会の実現を目指してPlan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)の仮説・検証型プロセスを循環させ、地域生活・福祉・健康マネジメントの品質を高めつつ活動できる人材育成を目指した教育プログラムを検討し実施・評価を行う。