大津皇子詩歌における「錦」の発想―「山機霜杼織葉錦」と「経もなく緯も定めずをとめらが織る黄葉」―
土佐朋子
大津皇子詩歌には、黄葉を錦に喩える表現がみられる。これは歴史的に突出して早い例であり、かつ漢籍における黄葉は、揺落と衰退の象徴であり、豪華絢爛な錦に喩えられることはない。大津詩歌の表現は、花が咲き誇る春山のあでやかな美や、輝く川面の美などを錦に喩える漢籍の表現を、黄葉の美的表現に応用して、独自に創りだされたものと思われる。
平成15年度都立航空高専研究紀要
第41号