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基本情報
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| 氏名 | 若林 靖永 |
| 氏名(カナ) | ワカバヤシ ヤスナガ |
| 氏名(英語) | WAKABAYASHI Yasunaga |
| 所属 | 【教員用】 通学課程 社会学部 公共政策学科 |
| 職名 | 教授 |
| researchmap研究者コード | 1000182046 |
| researchmap機関 | 佛教大学 |
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本報告は、日本の生活協同組合の事業の特質、可能性をどこにみるべきか、という点についての一試論である。
以前、組合員参加による生協事業の革新の一形態として「組合員の声を聴く」活動に注目し、コープみやざきの調査研究をすすめた(交易財団法人生協総合研究所『組合員参加による事業革新をめざして』、2001年;若林靖永『顧客志向のマス・マーケティング』同文舘出版、2003年等を参照)。本報告では、この事例をあらためてとりあげ、その特質を価値共創のプロセス、ケアの理念の展開として再評価しようとするものである。本事例研究の対象は、コープみやざきの「こんな仕事の工夫や改善をしました発表会」での事例報告(1998年度から2023年度まで)である。本事例では、宅配事業で組合員の声を配達担当者が働きかけて聞き出し、組合員の利用状況等をみて感想や不満を聴くなどの個別対応をすすめる取り組み、付箋紙や担当者ニュースなどで配達時に会えない組合員にもコミュニケーションをとる取り組み、店舗事業では、セルフサービス業態でなかなか利用者と接点が一般的にはあまりない状況で、店舗職員が組合員の顔と名前を覚えて声をかけたり、組合員もまた職員の名前を覚えて名前で声をかけたりする取り組み、店舗職員が自分の家族や趣味などを店舗で掲示(自己開示)していく取り組みなどが展開されている。
ここで生まれている生協職員と組合員による価値共創のプロセスは、組合員にとっての価値を生協職員の関与によって「現象学的に」実現しているというだけではなく、ケアの関係性が展開されている。今回取り上げる多くの事例は、生協職員が組合員をケアして組合員に役立とうとして、結果として生協職員もまた自己実現を遂げ、自身の生を生きている。このような意味で、生協事業の可能性として「ケア志向の生協」というモデルを提案したい。
本報告は、D2-2 “Co-creation of Value between Members and Co-op Staff in the Business of Japanese Consumer Co-operatives,” IYC2025 Osaka International Symposium, 16 October 2025.での発表と共通の問題設定で準備されている。本報告は、上記の発表では省かれていた事例を多くとりあげて、価値共創のプロセスについてより詳細に論じる予定である。