本発表では、現代中国語における「脏」と「污」の語義構造に関する既存研究を踏まえ、まず両語の多義的用法と意味拡張の方向性を整理する。そのうえで、これらの語が外国語学習者にどのように理解されているのかを把握するために、日本人中国語学習者を対象とした予備的アンケート調査を実施し、その結果を報告する。語義分析の結果、「脏」は身体的・即物的な汚れを意味の基盤とし、そこから空間的な乱雑さ、審美的な違和感、さらには道徳的な非難へと、主観的な評価を伴って意味を拡張していることが確認された。一方、「污」は物理的な汚染を起点に、制度的・社会的な価値の毀損へと階層的に意味を深化させている。さらに現代においては、婉曲的な性的表現を担う語用も獲得している。これらの語義の違いを踏まえ、学習者15名を対象としたパイロット調査では、適切度判断などを通して理解の傾向を探った。その結果、「脏」と「污」の基本的な意味についてはおおむね理解されていたが、抽象的・比喩的な文脈においては両語の使い分けに曖昧さや混同が見られた。本調査はあくまで予備的なものであり、今後は設問内容や調査規模をさらに精緻化する予定である。学習者の語彙的認知構造や誤用パターンのより具体的な解明に向けて、本格的な研究へと発展させていきたい。