本研究では、筋損傷の診断に極めて有用な超音波診断装置(エコー)の画像所見と組織学的・分子生物学的評価を関連付けることで、治癒判定の質的向上、及び介入法の選択と適切な復帰及び再発予防の指導の基礎となる知見の構築を目指したものである。当初対象とする筋肉を大腿四頭筋を中心にしていたが、再現性などを考慮して、前脛骨筋を主たる対象として、実験を継続中である。
①筋損傷モデル作成の確立とエコー画像評価の定量化:頻用される薬剤誘導性筋損傷モデルに関して、エコーガイド下薬液注入を基本手技として、病変の組織学的所見とエコー画像の比較を行った。ラット前脛骨筋筋腹への薬剤注入により、注入量に依存した病変の作成が可能であった。横断面での組織学的な病変領域面積と、エコーによる筋パターン異常領域面積が相関することが示された。筋線維再生の過程におけるエコー輝度変化に関して、経時的に有意な変化があることを示した。筋線維の壊死部には、基底膜の構成要素であるラミニンタンパク質の局在は持続しており、基底膜の変化はエコー輝度に反映されにくいことがわかった。本モデルの筋線維壊死部にみられる低エコー部は、マクロファージの集積部と一致していた。これらの結果に関して、現在英語論文の投稿準備をすすめている。
②薬剤誘導性筋損傷モデルと外傷性筋損傷モデルの比較:組織学的評価、エコー画像評価、遺伝子発現評価を行い、得られた結果を検討中である。神経刺激による筋収縮による筋出力計測の系を立ち上げ、活用中である。
③筋損傷への介入として、Whole Body Vibraton・トレッドミルによる走行負荷を検討中である。患部に対する薬液注入に関しては、筋損傷のタイプによって、その分布が異なるデータが得られている。ターゲットとする分子・シグナル経路を探索中である。