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Basic information
西方浄土変に関する今日の通説は、1937年に出版された松本榮一の『敦煌画の研究』にもとづいている。すなわち、阿弥陀の西方極楽浄土の荘厳相をあらわしたものを「阿弥陀浄土変相」と呼び、その典拠は『阿弥陀経』と『無量寿経』とし、一方でそれに『観無量寿経』の要素が加わったものを「観経変相」と称してきた。それに対し、敦煌研究院は「阿弥陀浄土変相」に代わって「阿弥陀経変」という名称を用いており、施萍婷氏は近年、往生者の有無により「阿弥陀経変」をさらに往生者を描く「阿弥陀経変」と描かない「無量寿経変」に細分する新説を提示している。しかしながら、『観無量寿経』は西方浄土の荘厳相を観想するための方法を詳述した経典であり、西方浄土を目に見える形に造形化した西方浄土変とは思想的に共通している。そこで本発表では、松本説の再検討を行い、敦煌莫高窟初唐期の作例に『観無量寿経』に特有の図像が描きこまれていることを指摘したうえで、『観無量寿経』こそが唐代西方浄土変の制作における最重要テキストであったことを論じる。最後に、「西方浄土変」「阿弥陀浄土変相」「観経変相」などの名称について検討を加える。 |