〈資料の紹介と研究〉帝国実業講習会と渋沢栄一の『実践商業道徳講話』―大正期実業教育の一側面―(下)
キーワード:実業教育、渋沢栄一、実業之日本社、商業道徳、関東大震災渋沢栄一は、信用こそが商工業の基礎をなすことを力説する。とくに、日本が対外的に飛躍しようとするのならば、信用の確立が先決問題である。また、商売に必要なのは、目先の智でなく真正で根本的な知識である。真正の知識は仁義と一致する。強い意志をもち、小事にも大事にも全精神を集中して当たるならば、そのとき成功が勝ちとられる。そして商売取引は、売る者も買う者もともに益するのであり、ここが投機とも戦争とも異なる所以である。こう説いた渋沢は、道徳と商工業
佛教大学社会学部論集
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