目的 本研究の目的は、数値データをアニメーション化することにより肉眼観察のみでは捉えにくい軌跡生成過程の特徴を明らかにして動作支援への応用可能性を検討することである。
方法 対象は6 0歳女性。Wa l k -Ma t e V i e w e r(Wa l k Ma t e L a b , To k y o , J a p a n)を用い、両側足部および腰部に装着したウェアラブル慣性計測装置により実生活場面におけるF O Gデータを取得した。C S Vデータを基にプログラミング言語P y t h o nを用いて矢状面における足部軌跡および左右方向の腰部軌跡のアニメーションを作成し、その生成過程を解析した。
結果 F O Gに先行して左脚の接地位置が徐々に後方へ偏位する傾向が認められた。F O G直前には左足部軌跡の生成開始に先立ち右脚が急速に接地し、続く左ストライド長は著明に短縮した。その後、右足部軌跡の生成開始は遅延し、開始後も速やかに減衰して前方への推進を伴わず上方への微小な反復運動(t r emb l i n g)を呈した。一旦F O Gを脱却した後も数歩以内に同様の過程を経て再度t r emb l i n gが出現した。同一平面上での重畳表示では、F O Gに先行して両側足部軌跡の振幅が漸減するシークエンス効果および左側の減少が優位な非対称性が明瞭に認められた。更に左右方向の腰部軌跡においてもF O Gに先行した振幅の漸減が認められ、t r emb l i n g中には左方向への微小な反復運動が観察された。
考察 アニメーション化により軌跡生成の時間的変化を可視化することで、I C F O Gが定義する「F O G開始(足部を離地しようとするが不十分なステップ)」に先行する特徴の把握が可能となった。また患者が訴える「足を前方へ出そうとするにも関わらず床に貼り付いたようになる」という主観的感覚の理解にも寄与した。本手法は、加速度の周波数解析や左右脚の角速度の交差相関では捉えにくいF O Gの特徴を視覚的に理解しやすい情報として提示できる点に意義がある。
結論 実生活におけるF O Gは環境要因や認知・情動など多様な要因により誘発されるため総合的な評価が求められるが、本手法はF O G対策における臨床推論を支援する有用な手段となる可能性が示唆された。