本稿では、法による「家族の個別責任化原則」と2022年改正で創設された「入院者訪問支援事業」の課題について、論究している。
まず、「公的責任を回避する「家族の個別責任化原則」について、法制度により精神障害者のケア責任を強いられている家族の義務及び任務の歴史から考察している。2013年の精神保健福祉法改正により「保護者制度」は、外形的には廃止されたものの、「家族等」により内実は継続しており、現代家族の価値規範ではなく近代家族の価値規範に基づく精神保健福祉法の制度設計を批判的に論じている。
次に「入院者訪問支援事業」は、非自発的入院患者の意思表明や意思決定支援の在り方に関する長年の試行事業の成果を素に法廷事業とされ、社会的入院患者の再生産防止を目的としている。しかしながら、市町村長同意による医療保護入院者を想定しているにも関わらず、実施主体が都道府県であり且つ必須事業でなく任意事業とされ、市町村の責務が有耶無耶にされている。また、家族等同意による医療保護入院患者が制度の対象と想定されていないこと、地域移行支援との連関が不明であること、等を入院者訪問支援事業の課題として指摘している。
それらを踏まえ、精神保健福祉法は、字面のとおり医療のみならず保健福祉も包含した肥大化した法体系であり、一流よりも劣る二流の医療法であり、二流の福祉法となっている。精神医療の一般化と同時に、保健福祉については、他の障害者への政策と統合化していくことが求められている。