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基本情報
第一次世界大戦末期の一九一八年六月、日系紙『大陸日報』の主筆としてカナダに赴く途上の鈴木悦は、太平洋航路の船中で、ロシア革命から逃れて亡命する青年と邂逅する。彼と接するうちに、自らの理想とする革命と国家・個人のあり方に揺らぎを覚えるのである。この顛末は『大陸日報』に短期間連載される。この時期、在加日系人たちは、市民権獲得を目指して、ヨーロッパ戦線に義勇兵を送り出していた。その民族・階級闘争の最中でこの掌編は読まれたのである。ロシアとカナダにおけるそれぞれの闘争は、洋上を移動する書き手の裡で交差し、移民地の読者たちに自らのジャーナリストとしての立ち位置を示すものとなった。 |