研究計画調書に記した「研究の目的」は、東アジア海域における1800年代の近代海図の整備過程を、その技術的背景の理解も含めて明らかにすることとし、そのため以下の4つの課題を設定した。それらは、①英国水路部による海図の整備過程の理解、②近代海図移行期としてのダニエル・ロス海図の調査分析(技術と地名など)、③19世紀後半における米国測量艦隊の活動、④日本海軍水路部による海図の整備過程の進展、であった。
それらの分析には、当時の資料(海図や水路誌など)の利用が必須であり、それらを所蔵する機関での調査を基本作業と考えた。研究計画では、2020年度から2021年度にロンドン(イギリス)の大英図書館や英国公文書館、ワシントンDC(アメリカ)の米国立公文書館やアメリカ議会図書館、東京の国立国会図書館や宮内庁公文書館、海洋情報部などでの調査を予定した。
しかし、新型コロナ禍の影響や所属校の意向により、予定していた国内外の調査を全く実施することができなかった。そのため、2020年度に引き続き2021年度についても当初の計画に従って研究活動が実施できないと判断し、最終的には自粛することとした。それは、採用された研究計画を安易に変更することは避けるべきと判断したからであった。そのため、2021年度は、研究計画の準備作業として、関連する文献の収集や過去に調査した関連資料の整理作業、関連テーマに関する研究成果の報告(雑誌論文や書籍)にとどまることとなった。