究では、これまでの「教室ユーモア」研究が蓄積してきた知見を援用し、実際の「教室ユーモア」の実相を分析・解釈することを試みた。特に「主体の目的」「学校文化との整合」「教室秩序との関連」という3つの視点を軸とすることで、それぞれの「教室ユーモア」を多面的かつ分析的に捉えることができた。その試行の中で、それぞれの視点の有用性が確認されただけでなく、これまで捉えどころのないものという印象を強くもたれ続けてきた「教室ユーモア」の実相についてもこのような分析視点を設定することで、ある程度の客観性を担保しながら語ることができることを明らかにした。これは「教室ユーモア」の文脈依存性や個別性を克服し、これまで以上に汎用的な議論を拓いていくことができる可能性を強く示唆する結果である。一方で今後、より精度の高い分析・解釈を行うための視点や方法を構築していくためには、それぞれの視点の関連性、より詳細な基準の検討が必要であること、学級風土との関連という側面のみではなく、教育活動との関連という側面からも「教室ユーモア」を捉えるための知見の充実が今後求められることが明らかとなった。