北京の居間で迎えた「8・15」:『中橋公館』における敗戦記憶とその再現
楊 韜
本稿では、戦後直後に真船豊が創作し、千田是也の演出によって舞台化された『中橋公館』を対象とし、その内容および舞台化の意図を分析し、敗戦記憶とその再現の実態ならびにその演劇的継承や共鳴をめぐる背景を考察した。『中橋公館』の原作から舞台化へのプロセスを「連動」の視点で喩えるなら、真船から千田への「敗戦記憶再構築リレー」と称することができる。また、真船豊の個人的体験に基づいて創出された敗戦記憶は、千田是也の舞台化によって集団的記憶として再現・共鳴されていた。一方、『中橋公館』は「引揚文学」系「実験的劇作」としても貴重な存在である。
文学部論集
思文閣出版
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