本稿は,17 世紀チェコの思想家ヨハネス・コメニウスの晩年の主要著作『人間に関わる事柄の改善についての総合的熟議』の第3部である『パンソフィア』の精読を試みる研究プロジェクトの一環である。本稿は,コメニウスが普遍性をどのように考えていたかを検討するため,universalisとともに,それに関連する語として,pan-, catholicus, generalis, publicus, communisが,『パンソフィア』でどのように用いられているかについて検討した。個別性や偶有性を超えた次元を重視したコメニウスはuniversalisを多用した。それは,彼の新プラトン主義的な世界観やキリスト教信仰を反映している。そうした理論的・宗教的側面とともに,コメニウスの意図が重視されなければならない。彼は,17世紀ヨーロッパの宗教的,政治的,知的な不和に対処し世界における調和を回復するためには普遍への志向が不可欠であると考えた。パンソフィアは普遍的知恵を意味するが,そこには,一見すると無目的に散乱しているかに見える世界の事物のうちに普遍性を見ることができることこそが知恵であるという含意が込められていたと解することができよう。